27 ページ27
『私を師事してくれている若い医者が、この前置いて行った花なんだよ。』
『君を見てるとキム先生の事を思い出してしまってね。
自分の事なんか後回し、献身的で…すぐに無理をしてしまうところとか、似てるんだよ。』
もしかして。
イ先生の言ってた
あのラベンダーの鉢植を持ってきた
キム先生っていうのは。
「ソクジン、先生…だったの…？…この花…。」
「うん…。A、気づいてくれたんだよね。
ありがとう。」
5年前…いや、9年前と変わらない、優しい笑顔。
少し伸びた髪型も、その端正な顔も、
私の記憶の中のソクジン先生、そのものだった。
夢、じゃない。
私の目の前にいるのは、本物の…ソクジン先生だ。
声を出して泣いてしまいそうで
口元を右手で覆った。
さっきジョングクが拭いてくれたのに
ぼろぼろと溢れてくる涙は
容赦なく私の手を濡らす。
「なんで…？ソクジン先生…っ…、」
黒いスラックスに、サックスブルーのカッターシャツ、
至極シンプルな格好で、片手にはラベンダーのブーケを持っている。
先生は片足をついて跪くと、そのブーケを差し出した。
「ラベンダーの花言葉って、貴方を待っている、なんだって。」
「…う、ん…。」
「もしかしたら、俺のその思いが、Aに伝わったのかな。
俺もずっと…Aの事、待ってたから。」
差し出されたブーケに手を伸ばす。
ラベンダーの他にハーブや霞草も束ねられていて
ナチュラルで…可愛いブーケ。
「…ソクジン先生…。」
確認するように
もう一度先生の名前を呟く。
思わず自分の胸に引き寄せた。
涙の雫が、ぽろぽろとブーケに落ちる。
「A。」
先生が、掬うように私の左手を取った。
指先に感じる、先生の手の温かさ。
真っ黒でガラス玉みたいに綺麗な瞳が
私の目を捉えて離さない。
先生のその形の整った唇が
ゆっくりと言葉を紡いだ。
「もう、俺…Aと、それから…ジェヒョクを、離したくない。
俺と、家族になろう。
これ、受け取ってくれる？」
その言葉と共に差し出されたもの。
先生の右手のひらに乗っているのは、小さなネイビーの箱の中におさまっていて
眩いほどの輝きを放っている、
まるで、小さなティアラのような、指輪だった。
「そ…それ…。」
あの、ジョングクと行ったジュエリーショップで見てた
あの指輪。
はっとしてジョングクの方へ顔を向ける。
彼は、口角を指で上にあげる仕草をして
私に「笑って」と促していた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 536人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
virgo(プロフ) - アイアイさん» 全然大丈夫ですよ！！気にしないでください(*^o^*)わざわざありがとうございます( ´ ▽ ` ) (4月24日 22時) (
レス) id: 516b9936fc (このIDを非表示/違反報告)
アイアイ(プロフ) - 今更ながら名前を間違えてしまい申し訳ありません💦かなり失礼なことしてしまいました😭 (4月24日 22時) (レス) id: ef22ae402e (このIDを非表示/違反報告)
virgo(プロフ) - sukisukiduffyさん» いつもコメントありがとうございました！本当に励みになりました(*^_^*)ありがとうございました(o^^o) (4月23日 23時) (レス) id: 516b9936fc (このIDを非表示/違反報告)
virgo(プロフ) - アイアイさん» コメントありがとうございます(o^^o)なんとか完結させることが出来て良かったです。ありがとうございました(≧∀≦) (4月23日 23時) (レス) id: 516b9936fc (このIDを非表示/違反報告)
sukisukiduffy(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉更新のたびに楽しみに読ませていただいてました。釜山でバッタリ会うかも？と妄想してたので、ソクジン先生と結ばれて幸せになった完結に嬉しい気持ちでいっぱいです💜今後もまた素敵なお話待ってます、応援してます。 (4月22日 8時) (レス) @page31 id: f44f2f684c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：virgo | 作成日時：2024年4月2日 0時
